好雪録

2011年5月アーカイブ

2011/5/12 能面の死活

坂戸金剛家旧蔵の本面を主とした54面が、1935年、三井一族の総領家・北三井家に譲渡されたことはよく知られている。現在は、「旧金剛宗家伝来能面」と一括して国の重要文化財に指定、三井記念美術館に移管され、同館の目玉となって折々展示される。

その中でも最重要の一面、いわゆる孫次郎の「本歌」が、このほど現金剛宗家・金剛永謹氏の〈熊野〉で実験的に使用された。5月10日付け毎日新聞の報道に詳しい。

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2011年5月12日 | 記事URL

2011/5/1 観世会定期能の募金

本日は第1日曜日とて、松濤の能楽堂で恒例の観世会定期能。
観世清和〈繪馬〉、關根祥六・岡久廣〈蟬丸 替之型〉、観世銕之丞〈阿漕〉の能3番に、
狂言は野村萬〈茶壺〉と、なかなかの好番組で、成績も良かった。

終わって見所を出ると、生憎の雨。
見れば玄関には家元清和氏父子、また祥六氏はじめ職分が揃い、震災の募金箱を持って両側に列立している。
ちょっと〈伊文字〉の歌關を思い起こして可笑しかったが、一日を堪能した分、幾ばくかの募金に応じて能楽堂を後にするのはなかなか良い気持ちである。
観客の中には、能役者の素顔に触れて喜んだ向きも多いだろう。

実は、地震直後の先月の別会でも、同様に終演後の募金があった。その時はなんでも40万円からの志納があった由。
今月23日には同能楽堂で2部制の義援能があり、家元のシテで2番の能、破格の廉価で番組も良い。これなら誰でも、能を楽しみ、かつ、自然と献金に加わることができる。
震災の義援は能楽界の諸方で行われている。関係者の奔走には頭が下がるばかりだが、観世会の試みはその中でも群を抜いて活発なようだ。
能を演ずること、能を見ること、それらが慈善に繋がるというのは、無闇矢鱈な「自粛」よりもよほど健全ではなかろうか。

2011年5月 1日 | 記事URL

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