2011/12/30 素敵な小劇場は何処に | 好雪録

2011/12/30 素敵な小劇場は何処に

最近ある人から頼まれて、都内で比較的小人数の観客を前に演奏会のできる空間をあれこれ物色しているが、帯に短し襷に長しで、なかなか「これ」という場所がない。

キャパシティの他に、

1) 藝術空間としてデザイン性に優れ、
2) できるだけ繁華な場所にあり、
3) 交通至便、
4) ラウンジに酒茶を売るブースがあって、
5) 椅子も座りやすい。
となれば難しいのは当然とはいえ、世界有数の大都市・東京として考えるといささかお寒い現状である。
特に、1) の条件を満たす好空間は、まず思い浮かばない。

大劇場にしたところでそうである。

都内の大劇場でいささかなりとも美的情緒を感ずるのは、私にとっては日比谷の日生劇場ぐらいである。
取り壊された歌舞伎座にしても、戦後の吉田五十八の設計は、装飾性の点で戦前の岡田信一郎のものに勝るとは思えなかった。国立劇場、帝国劇場、新橋演舞場、みな私の観劇史を共にしてきた「小屋」だけれども、建物として愛着があるわけではなく、たとえ明日無くなったとしても特段の感は湧かない。

初台の新国立劇場には多少「劇場そのものへ足を運ぶトキメキ」があるのだが、1年前のこの項にも記したとおり、「何もない豊かさ」を誇るべき劇場空間に売店やら椅子・テーブルやら、雑多なものを後から後から詰め込み過ぎる。
上野の東京文化会館に至っては舞台の興をあえて醒ますかのような寒々しさあるのみだ。

クラッシック専用のコンサート・ホールに限って言えば、赤坂のサントリーホールが出来て以来この25年の間で見違えるほど好転した。貧寒たる日比谷公会堂や新宿厚生年金会館に足を運び演奏を聴いていた私の昔の記憶からすれば、それこそ雲泥の差である。
これが、他の音楽・演劇・パフォーミングアーツのジャンルを満たす方向に及んでほしい。
前記 1)~5) の要素をすべて満たす小空間がもう少しあっても、クラッシック専用ホール以上に需要はそこそこあると思うのだが。

日生劇場のようなイメージで2~300人を収容するスペース、または旧帝国ホテル演藝場のような場所があったら、さぞかし使いでがあるだろうに、と思うが、どうだろう。

2011年12月30日 | 記事URL

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