2012/1/31 平成23年度文化庁芸術祭授賞式 | 好雪録

2012/1/31 平成23年度文化庁芸術祭授賞式

本日、一ツ橋の如水会館で、平成23年度文化庁芸術祭の授賞式が催された。
既に報道されたとおり、萬歳楽座の〈道成寺〉が演劇部門(関東)の大賞として顕彰された。

式には萬歳楽座主宰の藤田六郎兵衛氏が臨席、同じく優秀賞の平幹二朗氏は公演中で欠席だった。
新人賞の演出家・青木豪氏と3人並べると、ちょっとした「判じ物」のようなメンバーながら、どれも極めて高水準の演劇的成果を挙げたことに相違なく、まことに健全な結果だったと改めて感心する。

過去に舞踊部門でも審査員を勤めたが、どちらもなかなか大変な作業。
10~11月の約1ヶ月、ノミネートされた30以上の公演を見るだけで相当の精力を消耗する。
私は能・狂言のプロパーとして演劇部門審査員の人頭に入っているかたちだけれども、当然、小劇場演劇やミュージカルなどにも等しく発言権があり、専門や嗜好を別にする他の委員の面々もしかり。

こうした銓衡についてはしばしば、「情実や馴れ合いで内幕は分からない」などと憶測をたくましくする向きもあるものだが、これまで私の経験では、そうした不愉快な場面に出会ったことはまずなかった。
面白いのは、しっかり稽古を積み丁寧に作られた舞台だと、その雰囲気は必ずやロビーで客を捌く関係者の立ち居にも自然と影響し、劇場全体が寛いだ中にキリリと引き締まった空気を漂わせている。
なんとなくダレて、内輪ばかりで成り立っているような雰囲気だと、肝腎の舞台もその程度、ということがはなはだ多い。

能にはめったに接しない委員の人でも、「芝居見」は鼻が利く。良い舞台はやはり評価が高い。今回も特段の甲論乙駁なく、実にスンナリと決まった
その意味で観世清和のシテによる〈道成寺〉は、現代の古典演劇の最高水準を示す一つとして、他の現代演劇の成果に劣らず大賞に選ばれたことに大きな意味があるように思う。

2012年1月31日 | 記事URL

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