2012/1/6 寒の入り | 好雪録

2012/1/6 寒の入り

本日小寒。
東京はまずまず、それらしい寒さだった。
が、それにしても霜柱は立たない。子供の頃は毎朝ザクザク踏み砕いたもの。
ましてや、裏庭のアオキの葉が寒気で縮れることなど、絶えて見ない。

近所に折に触れ臼で餅を搗くところがあって、昨日その支度がしてあったが、
なるほど、本日の「寒餅」を搗くのだった。
そう、子供の頃と言えばこの時分、餅菓子屋の店頭に「寒餅」の貼紙が出たものである。

寒の水は一年間保存していても腐らないという。
その縁で、寒中に搗いた餅は黴ずに長持ちすると縁起を担ぐのが寒餅。

むかし、餅は晴れの食べ物で、滅多には口にしなかった。
工場生産がこれだけ普及する前は、そう年中どこでも売っているものでもなかった。
それだけに、ことにご老人などは、餅に対して憧れ同然の価値を認める人も多かった。

亡き祖母は正月の餅が余ると、黴が多くなる前に水餅にして蓄えていたものだ。
寒の水とはいえ、それに沈められた餅は、長く浸かるとやはりちょっとヌルヌルする。
なんとなく、ヘンな匂いも付く。
しかし、これ、中まで水分がしみ徹って絹のように滑らかになり、砂糖黄な粉で安倍川餅にするには格好の質感ではあった。

現在では、下手をすると、水餅にせずとも、いつまで経っても黴の付かぬ、永久保存可の怪しげな餅すら散見する。

寒餅。水餅。もはや死語であろうか。

2012年1月 6日 | 記事URL

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