2012/3/21 市の名前、売り升。 | 好雪録

2012/3/21 市の名前、売り升。

大阪府の泉佐野市が財政破綻寸前で、財源確保のため市名の命名権売却を決定という報道
それはまあ、たいへんお気の毒ではあるけれど、やはり物事には限度というものがあるのではなかろうか。
貧すれば鈍するを地で行く事態に、ちょっと呆れてモノが言われない、という感じである。

ドイツ語の合成名詞よろしく、日本語でも複数の語を取り交ぜた造語はしばしば目にする。泉佐野市も、「和泉国の佐野村」を中心とするところから1948年の市制開始時に作られた名称。最近では新駅の命名には在地の利権を反映、都営地下鉄大江戸線の若松河田駅や落合南長崎駅のような「痛み分け」の複合名称にすることがあって感心しない。
東京でも、1947年に旧大森区が旧蒲田区を編入するかたちで新区名を定める時、双方の一字を取り「大田区」なる珍名をひねり出している。

奈良県には天理市という宗教団体名に拠る市名がある。ここは古代以来由緒正しい土地だから、布留市か石上市にしていればよほど結構だったと思う。「宗教都市として知名度を上げるため」と説明されているものの、国や自治体が一宗教の優遇に動く道理はない。
ハッキリ言えば、全国から集まる信徒を見込んだ経済効果を期待した相違ない。

利用する側としては、企業宣伝に有利だから金銭を出して命名権を買う訳である。
渋谷区立渋谷公会堂が財源確保のため4億2,000万円で命名権が売られ、電通を介したサントリーがこれを取得、2006年から2011年まで5年間は「渋谷C.C.Lemonホール」となっていたことは記憶に新しい。この場合、C.C.Lemonという若者向き炭酸飲料の名称だったから渋谷らしいと言えばそうではあったが、買い手によっては「渋谷月桂冠ホール」とか「渋谷松竹梅ホール」になっていたかもしれない。

そうすると泉佐野市も、アメリカかぶれの大富豪が買い取り「ニューヨーク市」になったり、大の贔屓が大枚をはたいて「市川海老藏市」にしたりするのだろうか。
こう思うと、いかなる命名がなされるか甚だ楽しみだが、何かのご縁で私が関西に移住せざるを得なくなったとしても、市川海老藏市民になるのだけは御免を蒙りたいところである。

2012年3月21日 | 記事URL

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