2012/3/31 藝魂といふことばあり春嵐 | 好雪録

2012/3/31 藝魂といふことばあり春嵐

本日は六世中村歌右衞門の御命日。
亡くなって11年目となるが、それまで5年間臥せっておられたので、最後にお目に掛かってから16年と相なる。

まことに、「十六年は一昔」。

例年の如く青山の御廟所に参詣した。折から吹き降りのもの凄きありさま。

お通夜の折は春宵一刻価千金、岡本町御旧宅の閑庭には桜がはらはらと散り懸かって、東京會舘の出張接待の用意もあり、まるで大成駒みずから参会者をもてなしてくれているかのような、しめやかで寛いだ雰囲気だったのを思い出す。
本日の如き荒天も、これはこれでまた、秋霜烈日の故人の生涯を思い起こさせる印象的なお日柄であった。

この日の墓前には決まって、「真喜雄」と旧本名で札を差した芝翫の供花が上がっていた。
今年はどうかと思ったが、やはり変わらず「真喜雄」の花が供えられていた。福助あたりの配慮であろうか。

神谷町すでに亡き今。
「お兄ちゃん」に寄せた芝翫の思い。それを受け止めた歌右衞門の思い。
これらばかりは余人の決して測り知られぬものであっただろうと、今あらためて思わされたことだった。

2012年3月31日 | 記事URL

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