2012/4/1 枝の主日 | 好雪録

2012/4/1 枝の主日

基督教徒にとって最も大切な復活祭は移動祭日であって、今年は4月8日で新暦の花祭=灌仏会と同じ。
それに先立つ日曜日を「枝の主日」と称して祝い慎む。

キリストが死を予覚してエルサレムに入城した際、民衆が彼を守護者だと思い込み、手に手にナツメヤシの枝を取って大地に投げ、行く道を覆って敬った故事によるのである。
それからわずかの間に人心が離反し、十字架に掛けられるに至った次第は、社会論的に考察しても恐ろしい。

「枝の主日」とは主にカトリックでの呼称で、プロテスタントでは「棕櫚の日曜日」と称する。
ナツメヤシやシュロのようなヤシ科の植物だけでなく、地域によっては別のものを用いて、日本ではソテツの葉。ヨーロッパ北部ではネコヤナギである。

私はキリスト教徒ではないのだが、先年ヴィーン滞在中にちょうどこの日に行き合ったので強烈な印象が残っている。
市内で名代のシュテファン聖堂の近所に定宿があるのだが、この日は朝から聖堂の前に露店が立ち、紐で束ねたネコヤナギの枝を売っている。
人々はこれを買い求めてミサに参列し、枝を聖別してもらい、家に持ち帰って祀る。
翌年まで保存しておき、焼いて灰にし、復活祭46日前の「灰の水曜日」の儀式に用いるのである。

ネコヤナギは寒地ゆえの代替物ではあるが、枯枝から福々しく芽吹くこの植物に「復活」の表象を見てのことであるに相違はない。

先日ちょっと書いたように5月の連休にヴィーン渡航を決め、既に宿もオペラも確保済み。
月が変わって、ちょうど1ヶ月後ということで、にわかに心慌ただしくなった次第である。

2012年4月 1日 | 記事URL

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