2012/4/24 いちはつの花咲きいでて | 好雪録

2012/4/24 いちはつの花咲きいでて

和歌の続きは「我目には今年ばかりの春行かんとす」。
国語科教材でも知られた、正岡子規『墨汁一滴』に見る連作のうち一首。

拙宅で本日、イチハツの花が開いた。こんにちではこの花は案外、珍しいかもしれない。
ドイツアヤメ(ジャーマンアイリス)ニオイイリスを「イチハツ」と呼び習わしている場合も多いが、そちらは重厚華麗、イチハツは簡朴清楚、およそ似て非なるものである。

むかしは藁屋根の棟に植えた。風除け・火除けのまじないとも言う。幕末に来日した外国人の目にこれがかなり印象的に映ったらしい。花盛りには、群れ咲いてさぞ美しかったことだろう。

子規が詠んだように、4月終わりから次々と開く乾生のイチハツは晩春の花。
これと似ているが、私が最も愛する花・湿生のカキツバタは、立夏を過ぎて見ごろを迎える初夏の花。
ハナショウブとなれば花期はさらに遅く、梅雨時に掛かる。

紫色を主体とする、西欧から見てある意味でわが国を代表する花・アヤメ=アイリス類の劈頭に咲き出すのがイチハツ。むろん、「いち早く咲く」ことからの命名である。

藁屋根に根を張ったまま殖えるほどの強靱な草ゆえ、乾燥に強く、ほとんど手入れ不要。
お志の向きには、ぜひ一株お植えになるようオススメしたい。

2012年4月24日 | 記事URL

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