2012/6/26 新国立劇場バレエ〈マノン〉 | 好雪録

2012/6/26 新国立劇場バレエ〈マノン〉

今日の東京は年に何回もないような良い気候。
晴れて空気が乾いていて、風がよく渡り、汗かきの私でも汗をかかない適温。
梅雨晴なのだが、まるでヨーロッパの夏のようだった。

夜は新国立劇場でバレエ〈マノン〉を見る。
ケネス・マクミラン振付の本作品は英国ロイヤルバレエの「当たり狂言」で、お国柄もあってかなり演劇的な仕上がり。

サラ・ウェッブのマノンは1幕目のあどけなさから一転、愛人に伴われデ・グリューに冷淡な態度を示す2幕目は高級娼婦然たる態度が堂に入っており、髪を短く刈られた(女囚として見せしめの風俗)3幕目ルイジアナ沼地の最期の無残な寂寥まで、性格付けの鮮やかさで見せた。日本人ダンサーだとそこそこ踊技は優れていてもこうした変わり目、ことに一種の「悪」が効かず、マノンに典型的な「ファム・ファタール=意識的か否かを問わず男を破滅に追いやる魔性の女」に適役がほとんどいない。
コナー・ウォルシュのデ・グリューは足腰の骨太な、王子役より〈ジゼル〉の猟師ヒラリオンなんかが似合いそうな感じ。ただ、相手役の支えは確かだ。この振付は随所に瞠目させる荒々しい型があり、マノンがほとんど物のように扱われる部分も多いのだけれど、並みの男性舞踊家だったらヒヤリとさせられそうな難所でも確実にサラ・ウェッブを補助。

3幕目でマノンを慰みものにしてデ・グリューに刺殺される看守がちょっと良い役だ。今日はものすごい長身でミュージカルの岡幸二郎に似たクールな表情の厚地康雄が良いキャラを見せていたが、7月1日にはプリンシパル・山本隆之が「ごちそう」で出る。典型的な「王子ダンサー」の彼がこの癖のある役(いささか猥褻・露悪的と言うべき振付がなされている)をどう演ずるか。身体的にそろそろキャリアも終わりに近い彼の演技には、ちょっと注目させられる。

2012年6月26日 | 記事URL

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