2012/7/15 伯牙山の粽 | 好雪録

2012/7/15 伯牙山の粽

「海の日」を末尾に昨日から3連休、とは全然気が付かなかった。
というのも例年、私は月曜日を空き日にしているためである。

大阪松竹座の昼の部に間に合うよう品川駅から新幹線に乗ろうと思ったところ、指定席が完売である。
自由席の具合を見たらやはり満席で、立ったまま大阪に向かって終日芝居を見る難儀を考えたら、さすがに亡羊たる心地になってしまった。

やむを得ず昼の部の観劇は断念。

暫く待つと空席が出たので、浮いた時間は京都で下車、翌晩の宵々山のことと考えていた祇園祭の鉾町訪問を済ませ、毎年吉例にしている綾小路通新町「伯牙山」の厄除粽を頂いてきた。

ご承知のとおり、祇園祭の山鉾巡行に参加する山や鉾を出す町々では、ご神体に因んだご利益のある粽を頒布する。むろん、食べる粽ではなく飾る粽だ。
「伯牙山」は旧称「琴破山」。
『呂氏春秋』に記され、わが国でも平安時代から名高い「伯牙斷琴」の故事を趣向とする山であるため、藝道守護のご利益がある。
私は毎年、ちょっとの暇を見つけてでも綾小路通新町を訪れ、粽を受けて、自宅と研究室の入口に懸ける習わしである。

ちなみに、伯牙山の飾り所は京町屋の典型として重要文化財に指定されている杉本家であって、ご当主はフランス文学者・文藝評論家の杉本秀太郎さん。祭の期間中公開され、座敷飾りのさまを間近で見ることができる。杉本さんご自身が気さくに対応なさり、色々と説明して下さるのは嬉しい。
炎熱の日中に訪れると、夜に比べて参観者も少なめでゆったりしており、暗い座敷内から中庭に咲く凌霄花が鮮やかな朱色に映じ、実に美しい。

粽の頒布は宵々山前日に当たる14日の正午からで、今回は早々に赴いたため座敷飾りはまだ準備中だった。
滞在時間5分ほど、飾られたばかりのご神体・伯牙像を拝みお賽銭の上げ初めをして立ち去ったが、毎年のことだから私はそれだけでも充分。

生きた祇園祭気分に触れたいのなら、17日の巡行をただ路傍でボーッと見ているよりも、人出もさほどでない宵々山(7月15日)あるいはその前日の午後から宵に鉾町へ直接足を運び、それぞれのご神体をとくと拝み会所飾りを楽しむことを是非オススメしたい。

2012年7月15日 | 記事URL

このページの先頭へ

©Murakami Tatau All Rights Reserved.