2012/8/27 「村上湛古典芸能塾」終了 | 好雪録

2012/8/27 「村上湛古典芸能塾」終了

お蔭さまで、全7回にわたり開催した池袋コミュニティカレッジの講座が終了。
梅若玄祥、山本東次郎、富田清邦、山勢松韻、それぞれの分野で現在およそ考えられる最高の演者をお招きし、貴重な実演をご披露頂いた。

この場を借り、出演各位、およびご来聴の方々に、改めて御礼申し上げます。

最終回は山勢松韻さんのご登場。

毎回、演者の方々にあえてご無理を申し上げ、こうしたカルチャースクールのような簡易の場では失礼に及ぶかとも思われる演目を実演願ったのだが、みな快くご承引頂き、恐悦に堪えない。

今回は、箏曲随一の名曲でありながら、名人上手の独奏に接することは甚だ稀な〈六段〉。および、山田流独自の組歌であり流祖・山田検校会心の名作〈初音曲〉。
前者は初心者誰もが伝習する曲。後者はよほどの奥義を極めないと習い取れない曲。
だが、どちらも箏曲というものの本質を端的に象徴する演目であると思う。

人間国宝・藝術院会員と言うと、そうした大仰なことを山勢さんご自身は好かれないのではあるが、こうした「お立場」を度外視して即座にお引き受け頂いたのはまことに嬉しかった。
また、実際の演奏も美事の一語に尽きるものだった。
特にこの日の〈六段〉は「まあまあ、でしたか......」とご謙遜で漏らされた如く、六代山勢松韻という藝術家のエッセンスが実によく出た、名演だった。

むろん、〈初音〉だって遜色はなかったのだが、こうした奥習の秘曲は「やはり、独りで稽古するのではなく、お人さまに聴いて頂くのが何よりの薬になります」と、流儀最高の名曲の一つの前に低頭なさるが如きご態度に敬服した。

ふだん取りとめのない款語、時には放談に及んでまで楽しくお話しさせて頂くのだけれど、そうした寛いだ時とは別に、衿を正して謹聴するに足るこの日の演奏に接するにつけて、私はやはり、当代山勢松韻のように素敵な、小気味のよい名手と時代を共にできたことを改めて最高の歓びと感ずる。

お召し物が、また、ステキでした。
薄黄色の上布に中型の桔梗を描き、背には山勢家の木瓜を一つ染め抜いた付け下げ。
帯は、陸軍中将を極官として退役された父君が戦前、公用で大陸出張の折に求められた清朝の官服を解いて帯に直した逸品で、青地の紗に美事な龍の刺繍。

和服に興味ある方ならば「おおッ!!!」と唸るはずの取り合わせ。
イヤハヤ、眼福でした。

山勢先生、もろもろ、本当にありがとう存じます!

2012年8月27日 | 記事URL

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