好雪録

2014年1月アーカイブ

2014/1/19 能の間狂言再説

本日は国立劇場で毎年恒例の「三曲の会」を聴く。
山勢松韻がタテを勤めた山田流〈六玉川〉がひときわ優れた出来ばえ。高音が難しい歌の格調といい、爪音の確かさ強さといい、ちょっと別格、である。
〈酒〉でなく〈笹の露〉と曲名を付すトメで箏の米川文子は化学繊維ならず絹の絃を用いたかと思う。演奏はさすが古風な柔らかさで、派手に弾き立てるわけではないのだが、音楽としてはすべての爪音の粒が機能している堂に入ったもの。米川敏子の巧みな三弦に比ベて何倍も藝柄が大きいのは、昔と今の藝人の修業の違いを端的に示すかのようだった。

さて、去る17日は国立能楽堂企画公演〈井筒〉梅若玄祥が大変な名演だった。

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2014年1月19日 | 記事URL

2014/1/16 新作〈天守物語〉打ち合わせ

今日は大学で卒業論文の口頭試問。
夜は朝日カルチャーセンター新宿教室で能〈隅田川〉にまつわる『伊勢物語』講義。
そのあと表題のお仕事、と激動の一日。

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2014年1月16日 | 記事URL

2014/1/15 外光の入る能楽堂

雪が降るかとの予報も外れ、寒中らしくただ冷えに冷えた一日。
大学も後期教場試験の時候となり、私も早速1科目分実施した。

さて、特に今日の日録ではないが、先日、東中野の梅若能楽学院の舞台で改めて思った。
外光の入る能舞台で見る能がいかに美しいか、ということ。

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2014年1月15日 | 記事URL

2014/1/14 和塾・講座「世阿弥」

大学で『源氏物語』賢木の巻を講じた後、夜は麻布鳥居坂の国際文化会館に赴き世阿弥講座。ここは明治天皇天覧歌舞伎の旧跡・井上馨邸が岩崎小彌太邸となり、戦時焼失後国有地となって払い下げられ今に到る由緒ある場所。宿泊や利用は会員制を基本とした静かな環境とて、折々訪れるたび心休まるありがたい会場である。

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2014年1月14日 | 記事URL

2014/1/13 サントリーホール「成人の日コンサート」

私の世代で「成人の日」といえば「1月15日」と刷り込まれている。
毎年、どの日がどうやら、いまだにピンと来ない。

銕仙会の初会能が例年この日だから常だとそれを見るのだが、今日は縁あって六本木・サントリーホールで開催された「第25回成人の日コンサート2014 」に行ってきた。
成人式帰りの晴れ着の若者が多いかと思うとさにあらず。主催元「みずほファイナンシャルグループ」の関係か、その業界の人々らしい観客が大多数であった。

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2014年1月13日 | 記事URL

2014/1/11 「翁付」の能のこと

日中は東中野の梅若初会能。そのあとは日比谷のシアタークリエで「クリエ・ミュージカル・コレクション」を楽しむ。

今宵の出演は石井一孝、上原理生、岡田浩暉、涼風真世、瀬奈じゅん、知念里奈、中川晃教、山口祐一郎と豪華で、彼ら彼女らが東宝ミュージカルのさまざまな名ナンバーを歌うのだから人気が沸かないはずはなく、チケットはとうに完売。
中では、前半最後に置かれた〈ダンス・オブ・ヴァンパイア〉第1幕フィナーレが圧巻。山口の当たり役・クロロック伯爵に配するに、石井のアブロンシウス、中川のアルフレッド、上原のヘルベルトと組んだ特別配役が揃いも揃って大傑作。「あー、こりゃ本公演で見てみたい」と思わされた。
他に第2部冒頭では、文字どおりの出世作でありながら前回から既に手掛けなくなっている〈モーツァルト!〉から「僕こそ音楽」が中川によって歌われた。私はこの"Ich bin Musik"という歌が、ことに中川の歌うこの歌が大好きなものだから、彼が20歳の初舞台にモーツァルトを演じ、文化庁芸術祭賞新人賞、読売演劇大賞優秀男優賞、杉村春子賞と総ナメにした10年前の生一本で烈しい歌唱を改めて耳にして、今に変わらぬ彼の歌いぶりに感無量。何だか泣けてならなかった。

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2014年1月11日 | 記事URL

2014/1/10 〈瀧廉太郎の友人、と知人とその他の諸々〉

日中は歌舞伎座の昼の部。
所用で後半〈松浦の太鼓〉からしか見られなかったが(お縫を勤める米吉の女ぶりが興行ごとに上がっている)、〈をしどり〉で福助に代わり遊女喜瀬川と雌鴛鴦の精を踊る魁春が良い。

決して踊技の巧みではない人とて、踊りそのものを純粋に楽しむ〈娘道成寺〉となるとダレるけれども、この出し物は芝居のクドキのように踊って見せて成功。攻めは不得手だが守勢に回ると強い魁春らしく、上下の巻で性格が変わっても息が持続してダレず、共演の橋之助・染五郎に比べて重心の低い身体づかいが際立って立派に見える。
下の巻で鳥身に変じた責メの振リを見ていて、こうした趣向の「因果物」が似合う人だから〈柳〉と同じく歌右衛門が若いころ一度だけ勤めた〈鷄娘〉は魁春にどうだろうかと思った。

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2014年1月10日 | 記事URL

2014/1/8 能の間狂言について

午後から久しぶりのお下がり。本日から年初の大学講義が始まった。

昨日付記した1月6日付・朝日新聞朝刊「文化の扉~はじめての伊勢物語」。
何人もの人から「読みましたよ」と言われたが、知友がその記事を送ってくれ、本日ようやく読むことを得た。私のインタヴュー記事は以下。

 一方で、全体を貫くテーマはあるようだ。明星大学の村上湛教授は「いち早く行動に移
 す雅(みやび)」を挙げる。例えば第一段で、昔男は美しい姉妹に歌を贈ろうと、晴れ着の
 裾を思い切りよく破る。感情に身を任せる美意識には、連れて逃げた女が鬼に食われる
 「芥川」のように、背後に死が潜む。

まずまず、無難にまとめられていて安心。

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2014年1月 8日 | 記事URL

2014/1/7 山口小夜子と"Hymne à l'amour"

今日は国立能楽堂で能〈當麻〉の後、演劇界の諸事に精通した知人たちと談語に時を費やして新年の情報交換。ここには記せない話題ばかりで恐れ入る。
それにつけても、雑誌やネット上に流出している「真相」がいかに当を得ていないか、あるいは別の「真実」を隠蔽するための操作結果であるか、改めて考えさせられた。結局、誰かが保身を擲って口を開き筆にしない限り、すべては闇の中に消え去るのである。

夜は打ち合わせの後、行きつけのバーへ。独酌とはいえ店主はもとより常連客にも知った人は何人もいるから会話には事欠かない。

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2014年1月 7日 | 記事URL

2014/1/6 新春浅草歌舞伎

今日は浅草公会堂で新年恒例の若手歌舞伎昼夜を観劇。
このところ毎年のように全日程前売完売の景気がすばらしい。

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2014年1月 6日 | 記事URL

2014/1/5 能〈竹生島 女体〉の異形性

本日は観世会定期能の初能。
午前11時から午後5時半まで、翁付脇能に脇狂言〈末廣〉の連続上演、クリ・サシ・クセを省略しない〈羽衣 和合之舞〉、トメに〈小鍛冶 黒頭〉、間に仕舞9番をはさんだ盛り沢山の番組を見通してさすがに疲労困憊。もっともそれぞれが見どころある出来ばえである。家元・清和をはじめ、観世流宗家派の藝勢が今まさに盛んであることを実感させられた。

今日の脇能は〈翁〉に続いて観世清和が演じた〈竹生島 女体〉だった。
これは喜多流の小書を移植したものである。

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2014年1月 5日 | 記事URL

2014/1/4 野村萬斎と茂山宗彦

1月3日は新幹線で西下したのだが、報道でご案内のとおり、有楽町沿線火災で新幹線が不通となりモロに影響を蒙った。

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2014年1月 4日 | 記事URL

2014/1/2 歌舞伎座の初芝居

もう30年以上も1月2日の初日には歌舞伎座を見るのが通例。
やはり、初芝居が「控櫓」の新橋演舞場では締まらなかった。
やはり、歌舞伎座に限ると、新装開場後の今日しみじみと思った次第。

そういえば、30年前の今日は、17代勘三郎の熊谷、歌右衛門の相模、梅幸の義経、13代仁左衛門の弥陀六、芝翫の藤の方で〈嫩軍記三段目〉を見たのだった。
諸役みな「最高」と唸る中で、勘三郎の直実のみセリフが全然入っていず黒衣ベタ付けだったのに憤った記憶が鮮明である。
もっとも、後日それが改善されてから見直した舞台を思うにつけ、以後あれほど竹本を活かした熊谷役者はいなかった。「17代勘三郎の『当たり役』が〈陣屋〉の熊谷だ」とは到底言われないにしても、そこから得たものは極めて大きかったのだ。

それにしても、この時の歌右衛門の相模のすばらしさ。
冒頭、「相模は障子押開き」と、正面の銀襖を出るアユミの充実。
「日も早西に傾きしに夫の帰りの遅さよ」と向こうを見やって思い入れ、膝を突き二重上に居定まるまで僅か1分かそこらの芝居に「人生」のすべてが見えてしまう驚異。
それこそ、幕見で何度見ても変わらず強烈に訴えかける「驚異」だったのだった......。

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2014年1月 2日 | 記事URL

2014/1/1 本年の主な活動予定

みなさん。明けましておめでとう存じます。
( ↑ 亡き6世中村歌右衛門は決して「おめでとうございます」とは言わなかったものです)

先刻ヴィーン楽友協会黄金楽堂から実況のノイヤールスコンツェルトも無事終了。
関東は日中折々強風でしたが冷え込まず暖かなお元日でした。

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2014年1月 1日 | 記事URL

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