2014/1/16 新作〈天守物語〉打ち合わせ | 好雪録

2014/1/16 新作〈天守物語〉打ち合わせ

今日は大学で卒業論文の口頭試問。
夜は朝日カルチャーセンター新宿教室で能〈隅田川〉にまつわる『伊勢物語』講義。
そのあと表題のお仕事、と激動の一日。

すでに元日のこの項でお知らせのとおり、この4月に大阪と東京で相次いで上演される泉鏡花原作〈天守物語〉についての打ち合せである。私は潤色・補綴の担当なので、総監修の梅若玄祥さん、演出の高橋正徳さんなどの方々に、一部仕上がった上演台本を今宵初めてお見せし、今回の脚色方針を説明。取り立ててご異論もなくこのままOKとなり、一安心であった。
あとは今月中に完成させ、2月の記者会見や初の本読みに備える、ということになる。

鏡花作品の補綴・脚色は2005年の〈夜叉ヶ池〉で経験しているが、その時は「能楽劇」と銘打って大きく手を入れた。
今回は「能楽劇」を謳わないけれども、能、狂言、歌舞伎からも出演者を集めている。

ある意味で破綻も多い〈夜叉ヶ池〉に比べて〈天守物語〉の完成度の高さは比較にならない。鏡花原作ことにセリフには原則として手を入れず丸ごかし活かし、玄祥さん自ら扮する近江丞桃六の部分を中心に必要最低限の改変にとどめようと思う。
ただし、今回は座組の関係で補筆を加える必要があり、制作側の依頼でその部分は書き足すことにした。余儀ないことではあるが、それでも鏡花原作の玲瓏たる完成度を壊さないよう、かえってそれを浮き上がらせる効果を挙げるよう、せいぜい試みたいと思う。

補綴というのはそれだけの作業ではなく、「ト書き」部分を見直して、効果音楽や演出的な要素もいちおう台本に書きこんでゆく。実際の稽古場では演出家や時として出演者との討議によって変えては行くものの、「叩き台」としてのコンセプトは補綴者の立場として台本に示しておかねばならない。
その意味で、こうした仕事は戯曲の「読み」を自ら問うことになるので、批評という行為にはきわめて有益な刺激になるのである。

依頼による「お仕事」としてお引き受けした以上、制作側の要望に極力沿ってまとめる必要があり、必ずしも私個人の意図のそのままではない部分もある。だが本来、現場の「芝居づくり」とはそうした「相互作業」でもあるのだ。

「仔細は見てのお楽しみ」としても、これから折に触れ、進捗状況はご報告するつもりです。

※なお、一部の既報では表題のように「新作」となっていますが、今回は鏡花原作〈天守物語〉に敬意を表し、原則としてそれに準拠する補綴作品であって「新作」とは違いますので、以後は「新版」と改めるよう、広報担当の方に本日お願い致しました。

2014年1月16日 | 記事URL

このページの先頭へ

©Murakami Tatau All Rights Reserved.