2014/2/1 新版〈天守物語〉制作発表記者会見 | 好雪録

2014/2/1 新版〈天守物語〉制作発表記者会見

すでに当HPでお知らせし切符も発売された泉鏡花原作・新版〈天守物語〉の制作発表が、本日、国立能楽堂2階の研修能舞台で行われた。
主要出演者すべてと演出の高橋正徳さんに伴い、私も末席を汚した次第。

席上で簡単に述べたが、今回は「新作」ではなく「新版」である。
原作戯曲は鏡花の劇作の中でも際立って完成度が高く、ことにセリフの様式で全体が決まるから、作者鏤骨の修辞をあだおろそかに省いたり変えたりしては〈天守物語〉を上演する意義そのものが失われてしまう。
従って、富姫、亀姫、図書之助の主要3役に関しては鏡花原作を一言一句そのまま活かし残してある。

それでは「補綴の役は何のためか?」と言われよう。
私の主な仕事は以下の2点。

1)今回は朱の盤坊を狂言、桃六を能の役者が演ずる。それぞれ単に普通にセリフを言うばかりでは両役を能・狂言から登用した意義が薄い。
よってこの2役に限って、一部、狂言と能の様式に合わせて書き換えた(たとえば、どちらも謡ガカリにしたところがある)。
ただ、それにしてもまったく新規の修辞に置き替えるのではなく、原作を極力活かした無理のない文飾にしたつもりであり、それも最低限にとどめた。その点、狂言の様式で一部を大幅に書き換えた2005年の〈夜叉ヶ池〉とは異なる。

2)今回は制作上のプランで「泉鏡花」役として三上博史さんを登用している。もちろんこれは原作にない役柄であり、制作側の依頼によってここは私がまったく新規に執筆した。「泉鏡花は作者として如何なるモチベーションのもとに〈天守物語〉を書き顕わしたか?」というのが新規執筆部分の要点。詳細は是非、舞台を実際にご覧の上、お確かめ頂きたい。
ただ、なんと言っても本編の戯曲のほうが肝腎なので、一種の狂言廻しとしての「泉鏡花」場面は冗漫にならぬよう、簡潔にして意図鮮明なることに意を用いたつもりである。

主要な配役は「活動記録」の欄に記したのでご参照願いたい。
2月12日には顔寄せを兼ねた初回稽古として「本読み」がある。
これから順次、稽古場の記録などもご報告するつもりであります。

2014年2月 1日 | 記事URL

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