2014/2/12 10万ヒット御礼+新版〈天守物語〉読み合わせ | 好雪録

2014/2/12 10万ヒット御礼+新版〈天守物語〉読み合わせ

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ちょうど何気なく開けたところ私自身「100,000」を踏んでしまったのもお笑い草ですが、
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さて。
本日は午後6時から新版〈天守物語〉の顔寄せを兼ねた初回の集合。芝居づくりの吉例、脚本の読み合わせを行なった。
泉鏡花役の三上博史さん、小田原修理・山隅九平役の高澤祐介さんと三宅近成さんは所用にて欠席だったが、他の主要なキャストはすべて揃い、総監督の梅若玄祥さんと演出の高橋正徳さん主導のもと、それぞれが役に扮して脚本を読み上げた。

これに先立つ午後3時半から、富姫付き腰元役(原作「撫子」を省き「桔梗・萩・葛・女郎花」4人に集約)に出て頂けるタカラジェンヌ、花瀬みずか・風莉じん・初姫さあや・春風弥里の諸嬢に御老女格・薄役の青井陽治さんも含め、昨夜の大空祐飛さん同様に、私が中心となってセリフ扱いの摺り合わせを行なった。

今回の出演メンバーは私の印象に残る観劇体験と重なって、初めて一緒に仕事をするような気がしない。能・狂言や歌舞伎の方々が「おなじみ」なのは当然としても、ふだん宝塚を見る習慣はなくても大空さんは退団後初の大役〈唐版・滝の白糸〉のイメージが鮮やかに残っているし、須賀貴匡くんは〈仮面ライダー龍騎〉は知らなくても2011年〈プライド〉、2012年〈4 four〉での演技と役者ぶりが忘れられないほどすばらしかった。三上博史さんといえば、これはもう2005年に見た〈ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ〉にとどめを刺すのであって、みな一様に「板の上」で激しい勝負を重ねた経験のある方ばかり。その点、実に信頼が置けるのである。

ここでご報告したとおり、大空さんとは前日かなり詳しくセリフの打ち合わせをし、私も腹蔵なくアドヴァイスしたのだけれど、さすがはプロである。今日また通して聴くと細かな抑揚や発音等、前日の指摘がすべて活かされていて、藝柄さえひときわ精彩を加えていたのには実に感心した。芯の強さのなかに秘められた根源的な優しさは大空さんの特長であって、天守夫人富姫に必須の藝格も高い。私は、白銀の弦を張った香木づくりの弓を思った。
こうした魅力にあふれた大空さんの隣に座って「真の恋は、心と心」とか「千歳百歳にただ一度、たった一度の恋だのに」など鏡花鏤骨の名ゼリフを聴いていると、文字で綴られた脚本が血のかよったドラマとして再生してくる「秘蹟」をまざまざと感ずる。これから2ヶ月の間で大空さんの富姫がどれほど花と実を富ませてゆくか、ファンの方々には乞うご期待、というところである。

ほか、制作側の立場を離れても他の方々も十二分に期待させられるもの。「デウス・エクス・マキーナ」式に最後を締めくくる玄祥さんの桃六は能ガカリの手強いコトバと節(ある能の一節をそのまま活用もした)は予想をはるかに超える効果を挙げたし、凛然たる口跡と爽やかな男ぶりの須賀くんは切って嵌めたような適役。持って生まれた声質だろうか、まだ高校生というのに亡き歌右衛門の声音を髣髴させる梅丸くんの亀姫は男女の性差と演技様式の違いが大空さんとかえって好対照となって面白く、いろいろな意味で収穫の多い読み合わせだった。

初日が開くまでまだ2ヶ月以上。本格的な稽古の始動は3月18日以降だが、大阪・東京、両公演とも幸いご好評を頂き、売れ行きは好調のようである。
「良いお席はどうぞお早めに」と、私も宣伝のオススメを一言申し上げておきます<(_ _)>

2014年2月12日 | 記事URL

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