2014/5/10 銕仙会面装束特別展観 | 好雪録

2014/5/10 銕仙会面装束特別展観

本日は国立能楽堂で〈鐘の音〉と〈蝉丸〉を見たあと表記の催しへ。
舞台評は『能楽タイムズ』月評担当として後日、当該紙に掲載予定。

銕仙会の展観では伝福来作銕之丞家現蔵3面の翁面のうち1面をはじめ能面12面ほか、
厳選された品々が見所と舞台に広げられ、観世銕之丞氏の説明ともども楽しんだ。

加賀前田家旧蔵「群青地市松丸文様縫箔」は精緻な刺繍が驚異的。
300年を経ても群青が実に鮮やかな逸品とて、当代銕之丞氏も尊んでまだ着用したことがないという。
私は先代の「道成寺」の腰巻でこれを見た記憶が鮮明で、その時はてっきり新品と思っていただけに驚いた。

同じく「白地福良雀文様摺箔」はやはり先代の〈三輪 素囃子〉後ジテ腰巻で見たことがある。
裏地の緋色が時代を経て良い具合に醒め、近くで見るとやつれてはいるが、離れて見ると何とも高雅ですばらしい。

批評を書く際できるかぎり面・装束の種類や伝来に触れたいと思うのだが、紙数の関係で割愛せざるを得ない場合が多い。それでも、心入れの豊かな役者は鬘帯一本の選択にも留意する。
そうしたところは微細にわたり見逃したくないと、私は思う。

午後の能も展観も、先日の〈新版 天守物語〉でご一緒した三上博史氏と同道。
そのあと食事を共にして談論風発ゆるりと話し合えたのも収穫だった。
もう長いこと注目してきた役者さんとて、年齢ほぼ同じなためか、彼のこれまでの舞台歴についても知るところが多く、何かと話題が共通する。
三上博史と言えば2004年PARCO劇場初演〈ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ〉である。
その新制作時の裏話、見た私の感想、こうした交歓は実に有意義なことであった。
〈ヘド〉に続く転機は2012年NHK大河ドラマ〈平清盛〉鳥羽院だったそうで、これは私の専門内の時代背景とて、待賢門院がどうの美福門院がどうのと盛り上がったのは傍目からは不思議な光景だったかもしれない。

今宵の夕食は、私が30年来行きつけの六本木「オー・シザーブル」。
料理はもちろん、店の雰囲気、そしてマダムのお人柄がすばらしい。
毎年欠かせない白アスパラガスの味が、今日はひときわ結構でした。

2014年5月10日 | 記事URL

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