2014/5/12 劇団新感線〈蒼の乱〉@梅田芸術劇場 | 好雪録

2014/5/12 劇団新感線〈蒼の乱〉@梅田芸術劇場

今日は日帰りで大阪観劇。
東京公演を見ることができなかった表題の人気公演である。

必ずしも新感線の熱心な観客ではない私だが、今回は平幹二朗の初参加とあって見逃すことができなかった。
東京公演より縮まったとはいえ、20分の休憩を挟み第1幕95分、第2幕105分と、能2番分のヴォリュウム。
ドタバタの喧噪芝居に終始するかに見えて中島かずきの脚本、いのうえひでのりの演出、ともに細心に書かれ考えられて巧緻であり、「いのうえ歌舞伎」と銘打つだけに善悪攻守が目まぐるしく変転する展開にも隙がない。この「新感線様式」を認める限り立派なものだ。
たとえば、「地球ゴージャス」の舞台に時として見られるような非知性的な欠陥は、ここには感じられない。

ただ、多くの役者のセリフは空回りして、よく聞こえないことが多い。
主役の将門を演じた松山ケンイチは映像畑の俳優で舞台出演が今回2回目とあれば是非ないことだが、幾つかのパターンを繰り返すかのような絶叫口調があまりに単調。真摯さに好感充分とはいえ、演技も含め一本調子に過ぎて、ちょっと全体が持ちきれなかった。
その点、蝦夷の首長・常世王実は藤原仲平+「奥の大殿」太政大臣藤原忠平2役を演じた平幹二朗はいつもながら圧倒的な口跡。役柄の性格は歌舞伎で言えば国崩し的な前者、公家悪的な後者、どちらもやや常人めいて、暗鬱魁偉な妖怪風には傾かない演出だったけれども、単純に「悪役」とは割り切れない難しい両役に楽々と扮してしたたかな存在感を放ったのは予想どおりだった。
失踪した夫・将門に代わり天海祐希の扮する渡来人・蒼真が「将門御前」と名のって全軍指揮を執る決意の場面で平の常世王と対峙した第1幕後半、それまでの「新感線様式」に亀裂が入り、舞台にたちまち光が満ちた。
天海も平も「板の上」で勝負してきた第一級の舞台人同士なればこそ可能な「演劇の秘蹟」である。

大阪興行も成績上々、追加公演夜の部を控えた合間に平さんの楽屋を訪ねしばし懇談。
お元気で何よりであり、8月シアターコクーン〈炎立つ〉のこと、来年に内定したある期待の舞台の話、いろいろ伺えたのは嬉しかった。

夕食は天満の割烹「宮本」へ。
私がもう20年以上も通って親しくしている奈良の懐石料理「温石」に宮本さんご夫妻がよく来られる縁で今回はじめて訪れ賞味した。
法善寺横丁の名店「本湖月」から独立し開店2年目とて、食器類の蒐集にはまだ苦心しておられるものの、数寄屋風の内装はもとより、料理の味も品良く上々である。
今後こなれ、花開きほぐれるのが楽しみな、ステキなお店だった。

2014年5月12日 | 記事URL

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