好雪片片不落別處 | 好雪録

好雪片片不落別處

この「好雪錄」は、ある程度の長文を掲載する別項「批評」とは別に、日々いろいろと見聞した物事についてブログ形式で記録を残すページです。したがって、あるいは雑然とした内容になるかもしれません。

「好雪錄」とは差し迫った咄嗟の命名ではあるのですが、出典は『碧巖錄』。その第42則「龐居士好雪片片」に見える「好雪片片不落別處(こうせつへんぺんべっしょにおちず)」は、冬座敷の掛物にしばしば見る禅語です。龐(ほう)居士(?~808年)は唐代の人で、能〈輪藏〉のシテ・傅大士(497~569年) ともども、優れた在俗仏徒として禅の世界で今も畏敬される古人。『碧巖錄』の仔細は門外漢が説くべきではなく、詳論は省きますものの、いちおうこんな話になっています。「名僧・薬山禅師(745~828年)を訪ねた龐居士の帰途、十人の禅者が見送った。空から降り来る雪を指した龐居士が『好雪片片別処に落ちず』と言ったのに対して、一人が応え、ここから禅問答となった」。というわけで、肝腎は「好雪片片不落別處」と言ってのけた龐居士の境涯と、それに対する禅者の挨拶なのですが、ご興味の向きは岩波文庫(旧版および新版)『碧巖錄』を繙読、さらには師家の提唱でこれに接することをお勧めします。

いささか禅語の曲解に類することながら、私としては、日々接する舞台および演技者・演奏者と、客席の私と、ともに同じ雪中に「不落別處」でありたいと思っております。

このページの先頭へ

©Murakami Tatau All Rights Reserved.