批評

2011/1/4 大槻能楽堂自主公演能 新春能2日目

平成23年1月4日(火)午後2時 大槻能楽堂
◆〈翁〉 翁:友枝昭世/三番三:山本東次郎/千歳:山本則秀
/笛:藤田六郎兵衛/小鼓頭取:大倉源次郎/脇鼓:清水晧祐・荒木健作/大鼓:山本哲也
/地頭:粟谷能夫
◆狂言〈鐘の音〉 太郎冠者:山本則俊/主:山本則重/仲裁人:山本則秀
◆能〈羽衣 彩色之傳〉 シテ:片山幽雪/ワキ:福王茂十郎/ワキツレ:福王知登・喜多雅人
/笛:杉市和/小鼓:曾和博朗/大鼓:山本孝/太鼓:三島元太郎/地頭:大槻文藏

民俗を感じさせる喜之の〈翁〉に比べ、技藝を見せる友枝の〈翁〉(大夫は喜多通例の熨斗目小格子厚板ではなく白練の着付)。これは山本家の謹直な好助演の印象によるところ大で、鈴ノ段に掛かるところで小鼓頭取の打ち出しをキチンと聞き納めておいて、三番三と千歳とがクルリ左右に分かれる緊密な呼吸は、茂山家には薬にしたくもない。もっとも、東次郎は鈴ノ段でフラつき老いの影が差した。
※2011/1/9訂正。

〈三井寺〉能力アイを演じさせては当代一の則俊。この美声あっての名鐘である。もっとも、山本家の台本では最初に主が正しく「附け金の値を聞いて来い」と命じているのに、太郎冠者が勝手に「撞き鐘の音を聞く」と誤解してしまう。したがって、最後の反論「附け金なら附け金と、初めから言えば良い」が太郎冠者の言い掛かりに聞こえる欠点がある。改訂できないものだろうか。

幽雪の〈羽衣〉は昨年の〈定家〉に続く好演。序ノ舞の最初で高めに左右する型の美しさなど、基本的な所作に晴れやかな張りがあって、しかも余計な芝居をしない生一本の舞台である。天冠に櫻を立てたのは、泣増を着けても温かみのあるこの人らしい。もっとも、この曲の仏教的寓意からすれば、やはり白蓮が至当だろう。流水に花々を縫い取った華麗な紅地腰巻、薄色で枝垂櫻をあしらった白地長絹が美しい。大槻文藏が地頭を勤めた明朗な地謡共々、万事に麗かな晴天を仰ぐようなめでたい〈羽衣〉である。

2011年1月 6日 | 能・狂言批評 | 記事URL

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