批評

その他批評アーカイブ

2014/6/14 青山円劇カウンシルファイナル〈赤鬼〉

青山円劇カウンシルファイナル 〈赤鬼〉
2014年6月4日(水)~15日(日)  こどもの城・青山円形劇場
◆作:野田秀樹/演出:中屋敷法仁
◆出演: 黒木華(あの女)/柄本時生(とんび)/玉置玲央(水銀)/小野寺修二(赤鬼)
◆主催: こどもの城・青山円形劇場/ネルケプランニング

学生演劇の演目になっているので野田戯曲の中で最も上演頻度が高いのではないかと思われる〈赤鬼〉を、中屋敷法仁が演出する好企画。
「ファイナル」と銘打ち、閉場予定の青山円形劇場の空間を活かす舞台は新鮮。やりようによっては手垢の付いた感を免れないこの優れた寓話劇の再生に成功した。

続きを読む

2014年6月14日 | その他批評 | 記事URL

2014/2/4 「柿喰う客」 新作本公演〈世迷言〉

「柿喰う客」 新作本公演〈世迷言〉
作・演出:中屋敷法仁
出演(主なる扮役):七味まゆ味(帝)/玉置玲央(猿使い)/深谷由梨香(帝の妹)/永島敬三(婆)/大村わたる(猿と帝の妹の倅)/葉丸あすか(天)/鉢嶺杏奈(かぐや姫)/橋本淳(猿の皇子)/富岡晃一郎(爺)/篠井英介(かぐや姫の母の鬼)

なかやしき・のりひと。高校演劇の盛んな青森で偉才を顕し、渡辺源四郎商店を主宰する雄渾な劇作家・畑澤聖悟に師事。〈贋作マクベス〉で注目され、上京して平田オリザのいる桜美林大学文学部総合文化学科演劇コースを卒業。2004年に劇団「柿喰う客」を旗揚げし今に到る......とあれば、若手演劇人として望み得る最良の「修養」を経て、実に面白そうな劇作家であり演出家だと思っていた。

私は彼の仕事は今回が初見。
従って、過去の作風や演劇的ポリシーは知らぬまま、簡単な感想を記してみたい。

続きを読む

2014年2月 4日 | その他批評 | 記事URL

2012/12/17 Bunkamuraシアターコクーン 〈祈りと怪物~ウィルヴィルの三姉妹〉KERAバージョン

2012年12月17日(月)午後6時  Bunkamura シアターコクーン 
〈祈りと怪物~ウィルヴィルの三姉妹〉KERAバージョン
◆作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)/音楽:パスカルズ
◆【出演】ドン・ガラス:生瀬勝久/トビーアス:小出恵介/ヤン(流れ者)丸山智己/マチケ(ガラスの三女):安倍なつみ/パキオテ(白痴):大倉孝二/テン(ガラスの次女):緒川たまき/ヤルゲン(執事長):大鷹明良/アリスト:マギー/パブロ:近藤公園/レティーシャ(ローケの娘):夏帆/ローケ(仕立屋):三上市朗/コロス長:久保酎吉/エレミヤ(ガラスの妻):峯村リエ/メメ(メイド長):犬山イヌコ/ダンダブール(錬金術師):山西惇/ペラーヨ:池田成志/バララ(ガラスの長女):久世星佳/ジャムジャムジーラ(ガラスの母)+ドンドンダーラ(トビーアスの祖母):木野花/グンナル(司祭):西岡徳馬/コロス:原金太郎・楠見薫・加藤弓美子・野中隆光・日比大介・皆戸麻衣・猪俣三四郎・水野小論・中林舞 
※以上、出演者全員が香盤によってコロスなど他役も兼ねる。

この公演は「シアターコクーン・オンレパートリー+キューブ2012」と銘打つもの。今月は「KERAバージョン」で、自称「三姉妹モノの名手」(←宣伝惹句である)ケラリーノ・サンドロヴィッチ(=KERA)自身の作・演出。来月は同脚本で蜷川幸雄演出版の競演。Bunkamuraならではの穿った、面白い企画だ。

続きを読む

2013年1月 1日 | その他批評 | 記事URL

2012/9/18 騒音歌舞伎 〈ボクの四谷怪談〉  橋本治×蜷川幸雄 Bunkamuraシアターコクーン 

2012年9月18日(火)午後6時30分  Bunkamura シアターコクーン 騒音歌舞伎〈ボクの四谷怪談〉
◆脚本・作詞:橋本治/演出:蜷川幸雄/音楽:鈴木慶一
◆民谷伊右衛門:佐藤隆太/佐藤与茂七:小出恵介/直助権兵衛:勝地涼/お袖:栗山千明/次郎吉:三浦涼介/お梅:谷村美月/お岩:尾上松也/お熊:麻美れい/伊藤喜兵衛:勝村政信/四谷左門・男B:瑳川哲朗/仏野孫兵衛:青山達三/小仏小兵衛の母:梅沢昌代/老女A:市川夏江/宅悦:大石継太/第二のお岩:明星真由美/お色:峯村リエ/お花:新谷真弓/法乗院の所化:清家栄一/男A:塚本幸男/男C:新川將人/女子大生B:佐藤あい/奥田庄三郎:隼太/藤八:松田慎也/女子大生A:周本絵梨香/工事人夫:内田健司

「お芝居」というものは、プロットがあり、そこに人物相互が入り乱れ、見終わったときにはなにがしかの手応えが「コトバ」として残るものではなかろうか?

「コトバにならない感動的な演劇」と言うけれども、私はそうしたことを信用しない。

だって、演劇とは戯曲の舞台化であり、戯曲とはコトバによって織りなされたものだ。
これを見て取る私たちも、やはりそれぞれがそれぞれのコトバのかたちで「感動」の本質を確認する。
これが「芝居を見る」ということではないのか?
つまり、机上の戯曲であっても、舞台上の演劇作品であっても、読み取り、見取るわれわれは、コトバによって「それがいかなるものか」を確認しないわけにはゆかない。

芝居のテーマ・演劇の主題というものは、作者によって書き現わされるものであると考える人があろう。入試問題に出る「作者の意図を答えよ」というヤツだ。
だが、テーマ・主題というものは、作者や演出家や役者の側にあるものでは、実はない。
読者によって読まれない戯曲、観客によって見られない演劇、そんなもがないのと一緒だ。
したがって、戯曲や舞台(すなわち作者や演出家や役者たち)と格闘した観客によって自らのうちに刻印される抜き差しならないコトバこそ、真の芝居のテーマ・演劇の主題のはずである。
つまり、芝居とは、演劇とは、常に「解読されることを待っているもの」である。
そうした「内なるコトバ」をけざやかに呼び覚ましてくれるものが、私にとって優れた、感動的な演劇作品だ。

この考え、間違っているだろうか?

今さらこんなことを考えてしまったのは、〈ボクの四谷怪談〉という作品には「劇」が不在。「劇的状況」だけがただただ盛り上がって終わっただけだったから。
主題だのテーマだの、そんな観客のコトバを封ずるところから始まり、終わった舞台だ。

ただもう無意味に盛り上がるだけ盛り上がる、その過剰な虚しさが作者と演出家の「意図」だったとすれば、われわれにとって演劇とは、いったい何であるというのだろうか?

続きを読む

2012年9月18日 | その他批評 | 記事URL

2012/4/11 MEDEA〈王女メディア〉

2012年4月11日(水)午後7時 世田谷パブリックシアター 幹の会+リリック プロデュース公演
妻:平幹二朗/夫:城全能成/乳母・土地の女:石橋正次/守役・土地の女:有馬眞胤/領主・土地の女:三浦浩一/隣国の大守・土地の女:廣田高志/夫の家来・土地の女:斉藤祐一/夫の家来・土地の女:南拓哉/女たちの頭:若松武史
原作:エウリーピデース/修辞:高橋睦郎/演出:髙瀬久男/音楽:金子飛鳥/美術:伊藤雅子/照明:勝柴次朗/音響:高橋巖/衣裳:太田雅公/ヘア・メイク:Eita/振付:田井中智子/演出助手:渡邉さつき/舞台監督:井川学

「平幹のメディア」と言えば、昭和後期にずいぶん売り込みもし、世上にも知られたもので、活力のあり余っていた蜷川幸雄の真骨頂たる過剰かつ壮大な演出は、繰り返された野外上演の舞台面と一体となって、今も多くの人たちに強烈に記憶されていよう。
平がこの役を演じなくなって、既に13年も経っていたのだ。

続きを読む

2012年4月12日 | その他批評 | 記事URL

2012/4/11 幹の会+リリック プロデュース公演 平幹二朗〈王女メディア〉

2012年4月11日(水)午後7時 世田谷パブリックシアター 幹の会+リリック プロデュース公演
妻:平幹二朗/夫:城全能成/乳母・土地の女:石橋正次/守役・土地の女:有馬眞胤/領主・土地の女:三浦浩一/隣国の大守・土地の女:廣田高志/夫の家来・土地の女:斉藤祐一/夫の家来・土地の女:南拓哉/女たちの頭:若松武史
原作:エウリーピデース/修辞:高橋睦郎/演出:髙瀬久男/音楽:金子飛鳥/美術:伊藤雅子/照明:勝柴次朗/音響:高橋巖/衣裳:太田雅公/ヘア・メイク:Eita/振付:田井中智子/演出助手:渡邉さつき/舞台監督:井川学

「平幹のメディア」と言えば、昭和後期にずいぶん売り込みもし、世上にも知られたもので、活力のあり余っていた蜷川幸雄の真骨頂たる過剰かつ壮大な演出は、繰り返された野外上演の舞台面と一体となって、今も多くの人たちに強烈に記憶されていよう。
平がこの役を演じなくなって、既に13年も経っていたのだ。

※以下、本欄に掲載していた批評文は、今公演を収録したDVDの添付ブックレットに改稿・転載されましたので、ここでの公開は取り止めと致します。「幹の会+リリック プロデュース公演〈王女メディア〉DVD」をご覧下さい。お問い合わせは 株式会社リリック 03-3360-0353 lyric_co@yahoo.co.jp まで。(2012年7月20日追記)

2012年4月12日 | その他批評 | 記事URL

2012/2/1 ミュージカル〈ラ・カージュ・オ・フォール〉

2012年1月13日(金)13時半、19日(木)13時半、28日(土)17時半 日生劇場
ジョルジュ:鹿賀丈史/アルバン:市村正親/ジャン・ミッシェル:原田優一
ハンナ:真島茂樹/シャンタル:新納慎也/フランシス:日比野啓一
アンヌ:愛原実花/ダンドン議員:今井清隆/ダンドン夫人:森公美子/ジャクリーヌ:香寿たつき
ルノー:林アキラ/ルノー夫人:園山晴子/ジャコブ:花井京乃助
(男性アンサンブル)大塚雅夫・石丸貴紫・美濃良・香取新一・水野栄治・富山忠・附田政信・佐々木誠・杉山有大・小野寺創・栗林昌輝・白石拓也・鯛中卓也・高木裕和・土器屋利行・福山健介・村上聖・山本真広
(女性アンサンプル)髙橋桂・多岐川装子・浅野実奈子・首藤萌美
作詞・作曲:ジェリー・ハーマン/脚本:ハーベイ・ファイアスティン/オリジナル振付:スコット・サーモン
翻訳:丹野郁弓/訳詞:岩谷時子・滝弘太郎・青井陽治/演出:山田和也
音楽監督・編曲:八幡茂/音楽監督・指揮:塩田明弘
装置:田中直樹/衣裳:セオニイ・アルドリッチ、小峯リリー/照明:沢田祐二/音響:山本浩一
振付:真島茂樹/声楽指導:北川潤/ヘアメイク:宮内宏明/演出助手:落石明憲/舞台監督:二瓶剛雄
主催・企画制作:東宝+ホリプロ

ブロードウェイ・ミュージカルとしての'La Cage aux Folles'は1983年にニューヨークのパレス・シアターで初演された。
1987年まで1,761回ロングランの大ヒットとなったばかりか、打ち留め後も2004年と2010年の2度リバイバルされている。
歌舞伎のように古典の反復上演中心ではない、選り抜きの新作が現われては消える、生き馬の目を抜くブロードウェイ。
さほどの間隔を置かず重演を求められるというのは、それだけこの作品が敬愛されている証拠である。

続きを読む

2012年2月 1日 | その他批評 | 記事URL

2011/2/17 新国立劇場演劇公演〈焼肉ドラゴン〉

平成23年2月17日(木)午後1時 新国立劇場小劇場 
〈焼肉ドラゴン〉 作・演出:鄭義信/翻訳:川原賢柱/美術:島次郎/照明:柴勝次朗/音楽:久米大作
/金龍吉(「焼肉ドラゴン」店主・56歳):申哲振/高英順(龍吉の妻・42歳):高秀喜
/金静花(長女・35歳):栗田麗/金梨花(次女・33歳):占部房子/金美花(三女・24歳):朱仁英
/金時生(長男・15歳):若松力/清水(李)哲夫(梨花の夫・40歳):千葉哲也
/長谷川豊(クラブ支配人・35歳):笑福亭銀瓶/尹大樹(静花の婚約者・35歳):朴師泳
/呉信吉(常連客・40歳):佐藤誓/呉日白(呉信吉の親戚・38歳):金文植
/高原美根子(長谷川の妻・53歳):水野あや/高原寿美子(美根子の妹・市役所職員・50歳):水野あや/阿部良樹(アコーディオン奏者・37歳):朴勝哲/佐々木健二(太鼓奏者・35歳):山田貴之

2008年の初演が大好評を博し、NHKテレビの舞台中継で一般の認知するところとなって、今回の再演はかなりの人気。当日券を求める人々の列は連日長蛇をなしている。小耳にはさんだら、なんと「今日は朝の5時半からもうお並びだったんですよ」。

期待にたがわぬ最高の舞台である。
同時に、扱うテーマがテーマだけに、私は複雑な思いを抱く。

続きを読む

2011年2月18日 | その他批評 | 記事URL

2011/1/22 国立文楽劇場 初春文楽公演第1部

1・〈鶊山姫捨松〉中将姫雪責の段 
前:千歳大夫・清介/切:嶋大夫・燕三(清友休演) 胡弓:龍爾
/中将姫:文雀/岩根御前:玉也/廣嗣:勘緑/豊成:勘壽/浮舟:清五郎/桐の谷:簑二郎
2・〈傾城恋飛脚〉新口村の段
口:靖大夫・寛太郎/前:呂勢大夫・清治/切:綱大夫・清二郎
/梅川:紋壽/忠兵衛:和生/孫右衛門:玉女/忠三女房:一輔/八右衛門:紋秀

文楽のレベルが極めて落ちているのが憂慮に堪えない。

津大夫、越路大夫の在世中はまだしも、〈九段目〉〈道明寺〉を満足に出せない現在、はたして何をもって藝の規範となせばよいのか。

住大夫を名人視する一部の風潮に、私は賛成しない。
少なくともそういうことは、「住大夫が越路大夫をどの点で超えたか」という説明が論理的になされ得ない限り、言うべきではない。

二代目團平、初代玉造のことは考慮に入れながら、それでもやはり、摂津大掾、山城少掾はおろかそれ以前から、文楽の軸は浄瑠璃であり、その藝の基準は厳然たるものである。藝人一個人の個性など、大抵の場合吹けば飛ぶようなものであることは、たとえば其日庵秋霜烈日の言説を引くまでもない。

山城以後の文楽の藝評は、四代目津大夫と四代目越路大夫の総括を試み尽くしてから、なされるべきである。現在の文楽を取り巻く「ある種の活況」は、これらつい近過去の先人たちをあたかも無視するが如き浮説に基づくもののように、私は考える。

続きを読む

2011年1月31日 | その他批評 | 記事URL

2011/1/16 国立劇場邦楽鑑賞会 三曲の会

平成23年1月16日(日)午後2時 国立劇場小劇場
◆箏組曲秘曲〈八重垣〉 箏:今井勉
◆紀の路の奥〈四季の段〉 箏:萩岡松韻・鈴木厚一/三絃:鳥居名美野/笛:中川善雄
◆〈櫻川〉 三絃替手:米川敏子/三絃本手:藤井泰和
◆〈笑顔〉 三絃:富山清琴・富山清仁 
◆〈松廼羽衣〉 箏:山勢松韻・岸辺美千賀/三絃:山登松和
◆〈新青柳〉 箏:野坂操壽/三絃:矢崎明子/尺八:山本邦山

毎年正月の恒例である。
ただしメンバーも固定、さして新味もない。国立劇場の企画力の限界か。

続きを読む

2011年1月29日 | その他批評 | 記事URL

2010/12/28 新国立劇場オペラ公演〈トリスタンとイゾルデ〉

指揮:大野和士/演出:デイヴィッド・マクヴィカー/美術・衣裳:ロバート・ジョーンズ/照明:ポール・コンスタブル /振付:アンドリュー・ジョージ
トリスタン:ステファン・グールド/イゾルデ:イレーネ・テオリン/ブランゲーネ:エレナ・ツィトコーワ/マルケ王:ギド・イェンティンス/クルヴェナール:ユッカ・ラジライネン/メロート:星野淳/牧童:望月哲也/舵取:成田博之/若い船乗りの声:吉田浩之
合唱:新国立劇場合唱団/管絃楽:東京フィルハーモニー交響楽団

当劇場として〈トリスタン〉は待望の初演で、海外歌劇場叩き上げの実力に相応しく本年50歳の若さで文化功労者に選定された大野和士の指揮ということもあってか、めでたく夙に全席売り切れである。その2日目を聴く。全体としては普通の出来というところ。
大野の指揮は全幕をひとつの有機体としてまとめた感があり、幕ごとに切り離せば物足りないかもしれない軽量級である。全体は過度の激情に奔ることがないし、第1幕のそれに比べてより演劇的に聴こえがちの第3幕前奏曲でも、「苦悩」の表現を前面に出すような腰の据わった深い響きで対応することはない。いわば、素人受けするウェットな大芝居とは一線を画す、盛り上げ上手ではあっても、ヨーロッパ風の理知によって把握された乾燥した劇音楽だ。これには万全の響きで対応可能な管絃楽をもってすべきだが、いつものことながら厚みに不足する東フィル。第1幕トリスタン登場で金管がひっくり返り(人物が戯画化されて見える失態)、随所で綻びが耳に立つ。

続きを読む

2010年12月28日 | その他批評 | 記事URL

このページの先頭へ

©Murakami Tatau All Rights Reserved.