2012/2/14 ヴァレンタイン・デー | 好雪録

2012/2/14 ヴァレンタイン・デー

新宿・伊勢丹の地下食料品売場は大変な雑踏。
その中心は菓子の売場。

本日は「ヴァレンタインの日」である。

この日に限ってチョコレートをはじめ洋菓子が飛ぶように売れるのは日本だけだろう。
「洋菓子の日」と名を改めたほうがよろしくはなかろうか、と思われる凄まじい勢いである。

カトリックの聖人(実在不明として公的には指定解除)「テルニのウァレンティヌス」は結婚・恋人の守護聖人で、本日が殉教の聖日。その遺骸を納めている(と主張する)ヴィーンの中枢・シュテファン大聖堂では、毎年の恒例「テルニのウァレンティヌス」に捧げるミサが挙行されたはずである。

いちおう日本は仏教国なわけだが、このような熱心さで釈尊の降誕(4/8)、成道(12/8)、入滅(2/15)を記念する風習は定着していないのは寂しいことである。

カトリックの信仰は、しばしば殉教という苛烈なかたちで観念される。
この厳しさを念頭に置かない我々の菓子のやり取りは、真性の篤信者から見れば「悪魔の所業」と指弾されるはず。
同時に、それこそが多神教徒・日本人の発想の柔軟性とも言えるわけだ。

私は本日、あるお方からチョコレート色の結構な羽織紐を贈られて御満悦。
来月いわゆる「ホワイト・デー」には相応のお返しをするつもりだが、折に触れた贈答こそわが国の誇る社交文化。
天上の聖ウァレンティヌスも、私のような東方の異教徒を苦笑しつつ嘉し給うているに違いないと、思うことにする。

2012年2月14日 | 記事URL

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