2012/7/26 酷暑お見舞 | 好雪録

2012/7/26 酷暑お見舞

梅雨が明けたのは良いとして、乾天つづきで実に暑い。
みなさま、お見舞申し上げます。

この暑中にも関わらず、私はたいていスーツ姿。
よく「お暑くないですか」とか「オシャレしてますね」とか言われるのだけれど、そんなことではなく、これは必要に迫られてのことなのである。

というのも、劇場に赴くことがたいへん多い。
場内の冷房。これがバカにはできず、長時間の観劇となると大抵は辛抱の限度を超えて冷えるのだ。
先日も国立能楽堂で、たまたま正面席の壁際に坐ったところ、壁面上部に冷気の吹き出し口があって、これがモロに身に触る。
私は「お瀧行」とこれを言っているのだが(笑)、もうそれは、本当に冷水を浴び続けたようなもので、上着を着ていたのにすっかり冷え入ってしまった。

電車の車内も、床面に近く冷気が集まる。スカートや短パンの人たちはよほど足が冷えるのではないか。

自宅でも私は冷房を使わない。8月の暑熱で畳がぬるむほどの日中でも、窓を開け放してボーっとしているので、確かに汗はかくものの、熱中症にならぬ用意をしていれば、冷房漬けになるより健康に良いだろうと思う。

そう言えば、畏友・富柏村散人を訪ねて先年、8月の香港に遊んだ。かの地の冷房の効きすぎは驚くばかり。当地のカフェを「~氷室」と称するが、それこそどこもかしこも震え上がるほどの冷えかただった。

スーツというものは通気性の悪いもので、移動中の暑さは耐えがたい。その点、夏は和服に限る。宮古上布など風をまとっているような着心地だから最適なのだが、袴を着けるわけにはゆかないので、まあ、普段着にしかならない。小千谷縮は値段も手ごろ、色柄を見立てれば夏袴を付けてもおかしくない。これは家庭でザフザブ洗えるもので、汗になったら即、始末が出来て便利この上ない。

もっとも、さすがに和服で職場に通う勇気は私にはない。
早稲田にいた頃、内山美樹子先生はよく和服で講義をなさっていて、何やら詰まった紙袋を両手に提げ、文学部の長いスロープを思い詰めたような顔つきで上がってこられたのは印象的だったけれど、和服は女性だから合っていたようなもので、男性だったら國學院の岡野弘彦先生ほどの風格と立場が伴わなくてはむしろ怪しげだろう。

大学もあと一日を残すのみ、実質は夏季休暇に入って、家では人さまにはお見せできないようないい加減な恰好で過ごす日々がやってきました。

2012年7月26日 | 記事URL

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