2012/12/16 山本東次郎さんの人間国宝認定を祝う会 | 好雪録

2012/12/16 山本東次郎さんの人間国宝認定を祝う会

いささか旧聞に属するが、去る12月9日(日)帝国ホテル・孔雀西の間において、表題の祝賀会が挙行され、300人を遥かに超える盛況だった。
今回は山崎有一郎氏を代表発起人として当代東次郎氏の友人・知人関係が集まり、いわゆる玄人仲間ではない内輪の祝儀。交友の広い氏らしいほのぼのとめでたい、まことに良い会だった。

冒頭、馬場あき子さんの挨拶が秀逸。馬場さん、もともと弁舌が立ち勝って冴える方だが、この夜ばかりは先代以来その藝風を尊んできた山本家へ対する「愛」満々と漲る、血の通った言葉が感動的だった。
ふだんは洋装の由美夫人も、認証式・皇居参内に着用されたという薄色の色紋付をステキに着こなしておられたものの、勧められてもついに壇上に上がらず、ついに蔭の黒衣役に徹しておられた。独身で遺漏なく段取る人もあるにはあるが、やはり、舞台人には優れた内助の功が不可欠。能楽界にも賢夫人の名の高い女性は何人もいるのである。

この日の引き出物に配られた冊子『三世東次郎記・則寿稽古控』がまたすばらしいもの。
これは、当代の初稽古(1942年5月5日)から小学校6年生(1949年1月15日)までの舞台成果を、先代が寸評と共に遺したもの。戦中・戦後の激動が折り込まれると同時に、2人の弟を含めて先代がどれほど父として「愛の人」だったか、読んでいるこちらが涙を催すような貴重な記録である。東次郎さんは生前の先代がこのようなものを書き残しているとはまったくご存じなかったのだそうだ。

たまたま、この祝賀会に先立つ12月7日、『能楽タイムズ』の依頼で東次郎さんと対談の機会があった。記事は来年1月号に掲載予定なので、是非ご覧頂きたい。

なお、私が前月、依頼を受けて帯広の狂言会パンフレット用に執筆した小文「山本東次郎さん『人間国宝』認定と狂言の明日」があり、東次郎氏の希望によってこれが当日祝賀会パンフレットに転載されたところ、後日、何人もの方から恐縮なご感想を頂戴した。
よって、せっかくのことであり、東次郎氏の諒承を得てこの好雪録に再転載した(12月9日の項)。

ご興味の方はどうぞご一読下さい。

2012年12月16日 | 記事URL

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