2013/8/7 世阿弥忌逮夜の観世宗家対談 | 好雪録

2013/8/7 世阿弥忌逮夜の観世宗家対談

相不変、暑いが、昨日ほどではなく夕立もなかった。
午後、劇団四季のミュージカル〈ウィキッド〉を見る。前回ロングラン以来の東京再演だが、とにかくすばらしい作品であって、舞台好きは必見である。感想は明日。

午後6時半から8時まで朝日カルチャーセンター新宿教室公開講座「世阿弥の能とこころ」。観世宗家・観世清和さんと対談した。

昨春「観世流の能とこころ」と題し初めて対談させて頂いたが、実演者として、家元として、清和さんならではの興味深い話が続出、好評だった。それを受けての今回は、8月8日の世阿弥忌の前夜=逮夜にあえて日取りを設定、今年生誕650年の世阿弥に絞った色々なお話を伺う趣向だった。

24世観世左近元滋が大正初年に6,000円もの大金を掛けて内漆喰・外鉄筋コンクリート3階建ての蔵を建て、このお蔭で関東大震災と空襲の焼害を食い止めたこと。空襲直後、戸前を開けようとした先代宗家を通り掛かりの人が止め、冷え切ってから開けるよう教えられたため事後発火から逃れた話、など、世阿弥伝書や本面類が現在まで伝来したことの難事に実感があった。
ほかにも、「南朝方・越智氏を頼った十郎元雅は『政治と宗教に深入りしない』家訓に背き厄介を掛けたため類代大夫に数えない」「古伝に8月8日死去の記録がないため世阿弥忌を観世家で修する習いはない」「家元と関わりなく外部の人が色々な寺に観世累代の位牌・石碑を作られるのは正直困る」などの打ち明け話、「檜垣嫗が七世宗節の夢枕に立って蘭拍子を相伝した」「檜垣蘭拍子の舞の休息は、庭前の杉の木に一時凭れて休息しまだ蘭拍子を踏み続ける心で下居せず立ったまま」といった具体的な能の口伝など、こうして記していても当事者ならではの生動した談話が実に面白かった。伝承や遺物と直に接して生活している「観世大夫」ならではのお話、と言えるだろう。

お暑い中、ご参加下さった方々には、深く御礼申し上げます。

2013年8月 7日 | 記事URL

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