好雪録

2016年5月アーカイブ

2016/5/28 第4回清能会・塩津能の会〈弱法師〉演出新案

本日午後、喜多六平太記念能楽堂での「第4回清能会・塩津能の会」において、会主・塩津哲生氏の委嘱を受け、氏がシテを勤める能〈弱法師〉の演出新案を試みる機会を得た。
この能は世阿弥自筆本の転写本に基づく「古型復元」が幾度も試みられており、例えば、高安通俊をワキ方でなく狂言方が勤める、原文から類推されるツレ「俊徳丸の妻」を出す、ワキまたはワキツレとして(現行では登場しない)「天王寺の住僧」を出す......などの工夫が重ねられたが、正直なところみな「試演のための試演」に留まり、演劇的には錯誤としか言いようのない現行演出に勝るとは必ずしも言い難いものだった。

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2016年5月28日 | 記事URL

2016/5/26 国立能楽堂企画公演・復曲能〈菅丞相〉間狂言

本日開催の国立能楽堂企画公演「復曲再演の会」における拙作演出による復曲能〈菅丞相〉。おそらく室町時代の初演以来はじめての関東上演と思いますが、無事に終了致しました。国立能楽堂の当初予定ではわたくしが関わる予定はなかったのですが、その後の過程で予想外の委嘱を受け、私案を試みました。2002年の復興初演版とは異なりすべてにわたって新規の演出であります。高覧の向きは、よろしくご批正のほどを願い上げます。

今回上演に際し、[早鼓](この囃子事も今回新規の選択)で登場する間狂言・比叡山の能力は《立チシャベリ》とし、『狂言集成』所収の和泉流三宅派台本を参勘しつつも総じて新規に執筆しました。本日のアイは茂山正邦さん。実際には茂山家ならではの口調に合わせて細部の言い回し等は自在に言い換えて頂きましたので、実際の上演形は幾分異なりましたが(本日の所要時間はちょうど10分)、諸賢のご参考までに拙案の間狂言の原台本を以下、お示し申します。

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2016年5月26日 | 記事URL

2016/5/8 今月・拙作新演出の能3公演

今月たまたま委嘱が続き、私の手掛ける能の新案演出が3公演あります。
しかも月末4日間の内に断続・連続して集中。珍しいことであります。
ご興味の向きはよろしく高覧を願い上げます。

◆5月26日(木)13:00 東京・国立能楽堂
国立能楽堂企画公演「復曲再演の会」
 ★復曲能〈菅丞相〉 シテ:大槻文藏氏
2004年に復興初演された番外曲ですが、今回は全面的に新たな試案を制作。
囃子手附や大槻文藏氏による節付も一部変更し、間狂言も新規に執筆しました。
※この〈菅丞相〉新演出は年初予定に確定していなかったのですが、その後正式に委嘱を受け新案しました。私の独力による復曲・新演出として、これが8曲目となります(次項〈弱法師〉が9曲目、来年大阪での〈星〉が10曲目に繰り下がります)。

◆5月28日(土)14:00 東京・喜多六平太記念能楽堂
第4回清能会・塩津能の會
 ★能〈弱法師〉 シテ:塩津哲生氏
演出再考とはいえ世阿弥自筆本に拠るわけではなく、全体は喜多流現行版に準じつつ、
常の型だと気になるワキとシテの応対(最後に気づく前に延々と対面・対話する矛盾)解消のため、一部を間狂言(高澤祐介氏)とシテとの応接に替え、劇的整合性と演能の自然な流れを図ります。

◆5月29日(日)12:30 京都観世会館
片山幽雪師一周忌追善・第19回片山九郎右衛門後援会能
 ★復曲能〈墨染櫻〉 シテ:片山九郎右衛門氏
昨年2月の観世流での初演(シテ:大槻文蔵氏)に準ずるかたちで再演されます。
細部の運びや作リ物に多少の変更を加えるかも知れません。

2016年5月 8日 | 記事URL

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